名前会議

「あ、先生。新連載の原稿読んだんですけど」

「はい」

「1個。1個だけちょっと相談があって」

「だめですか?」

「いや……まぁ1個だけ。それ以外全部良かったんで。まぁ1個だけ」

「良かったですか?」

「良かったですよ。売れる!ってなりましたね。先生節が、こう……出てました。出てましたよ」

「出てたんですか」

「なんで1個だけ。1個だけなんで」

「はい」

「主人公の女の子いるじゃないですか。女子中学生」

「はい」

「吉沢歯茎っていうのはちょっと」

「まずいですか」

「まずいっていうか……。まぁでも変えて貰えたらなぁって……」

「……」

「ここだけ!ここだけなのでね!あとはもう、あれ……あの完璧でしたんで」

「変えます」

「はい。ありがとうございます」

「名前は僕が考えても?」

「…………はい、もちろんです」

「吉沢……」

「はい」

「吉沢鼻孔とか」

「いや……」

「まずいですか?」

「まぁちょっと……」

「ちょっと?」

「まぁ変えた方がいいですね」

「それはヒットの法則性とか?」

「まぁ、その……そうですね。法則性が、はい、法則がヤバイので」

「変えます」

「ありがとうございます」

「どういう名前がいいですか?」

「食べ物の名前とかどうですか?」

「食べ物」

「女の子に食べ物の名前ついてるのは受けがいいんで」

「あー」

「ありますよね、そういうの」

「はい」

「そういう感じで」

「はい……じゃあ、えっと」

「思い付きました?」

「そうですね……吉沢生姜焼きっていうのは」

「いや……」

「まずいですか?」

「ちょっと……生姜焼きは男の子だなぁ!」

「はい」

「まぁ……うん……もう一度変える勇気っていうか」

「変えます」

「はい、お願いします」

「吉沢親子丼」

「いや……様々な意味でまずいかな……」

「……」

「もっかい……もう一回だけ変えましょう」

「吉沢餃子」

ドラゴンボールみたいになっちゃうんで……」

「どういう食べ物がいいんですか?」

「甘い方が……」

「あー」

「甘いやつ頼みます」

「えー……吉沢甘酒」

「…………まぁ大分近いですね」

「近いですか」

「近い……ですね。もう少しです」

「なるほど……じゃあ……吉沢コーラサワー

「離れましたね」

「えー…………編集さんならどういう名前つけるんですか?」

「え」

「例えば」

「え…………」

「なんか編集さんからも一個」

「そうですね……」

「……」

「吉沢マロン」

「……」

「……」

「……」

「いや!これはないですね!今のは無しで」

「はい」

「もっかい0から考えましょう」

「……はい」

 

名前会議は続く。(終わり)